今回は、アートチャイルドケア南流山保育園の2023年度~2024年度のNo.1宣言をご紹介します。
年度初めの話し合いで、園の強みでもある自然を生かし、子ども達にもっと自然に触れて大胆に遊んでほしいという声が職員から多数上がりました。そのことから、2023年度のNo.1宣言は「自然を楽しむNo.1」に決め、散歩で子ども達の小さな発見を見逃さず、途中で何度も立ち止まり、保育者と子どもたちで見つけた自然を一緒に喜ぶよう留意したり、泥あそび、虫取りなど自然物と触れ合うような、子どもたちの「やりたい!」を積極的にあそびに取り入れ、たくさんの種類の野菜の栽培をしました。
園庭の一角にある小さい畑 “もりもりおやさいらんど” では、4、5歳児クラスを中心に、さつま芋・里芋・人参等、様々な種類の野菜を育てました。途中、カラスに苗を食べられるとういう被害にあい、畑を守ろうと5歳児が案山子を作成しました。残った苗を必死に再生し、なんとか収穫をすることできました。途中の畑の危機にも5歳児を中心にみんなで考え、作戦をたて、守るという経験をすることができました。
2023年度当初は、保育者が用意した活動を子どもたちに提供していく予定を立てていましたが、実際は子どもたちからのいろいろな発信をもとに活動内容を変更し一緒に取り組んだ結果、子ども主体の保育を実感することができました。
続いて2024年度のNo.1宣言を決める話し合いをした際、職員から「子ども主体の保育と分かっていても、どうしても保育者主体になってしまうことがあって悩む」という声が多数上がりました。
話し合いを重ねた結果、全てを変えることは難しいけれども、子どもの気持ちに寄り添った保育はできる。ということで、「寄り添う保育No.1」を掲げることとなり、各クラスに合った寄り添い方で1年間取り組むことにしました。
特に大幅に環境を見直した幼児は、クラス間で連携を取り「寄り添う保育」を考えました。
例えば、昨年度までは、1日の生活、遊び・食事・午睡をクラスごとに実施していました。
その中で「お昼寝したくないな」「周りがうるさくて眠れないよ」「お部屋であそびたい」「園庭に行きたい」「ごはんは後で食べたいな」という子ども達からの声があったものの、みんなの気持ちを尊重してあげたい気持ちはやまやまだけれど、担任1人だと限界…という状況でした。そこで新年度に入って直ぐに、基本的に3、4、5歳児クラス合同で過ごすようにしました。
そして4歳児クラスの部屋は午睡室、3歳児クラスはランチルーム、5歳児クラスは遊ぶ部屋とし、共有スペースにお道具箱のロッカーを配置しました。
ランチルームではあらかじめ子ども達にタイムリミットの時間を伝え、好きなタイミングで食べられるようにしました。
今ではとてもスムーズに行えていますが、初めのころは保育者も子ども達も新しい取り組みにバタバタしてしまい、給食が1つ余っていたので食べていない子を探す…などということもあり、本当にこの取り組みを行うことが良いのかと悩むこともありました。
5歳児は、就学にむけて、お盆を導入しました。食べられる量を保育者に伝え、よそってもらっています。自分で食べられる量を伝えることで、少し苦手なものも、自分で伝えた分は食べようとする姿も見られました。
生活ごとの部屋に分けたことで、食事中やお昼寝の時間中も遊びを制限されることなく、好きな遊びを堪能できる環境になりました。また、自分のやりたい遊びを制限してしまっているという話し合いの結果、各クラスのロッカーを廊下の共有スペースに移動しました。これにより、「昼寝中だから後でね」などと言わなくても、粘土やクレヨン、お絵かき帳がすぐ取り出せるようになりました。
また、室内遊びだけでなく、戸外遊びについても3クラス連携を図り、クラスごとでなく「お部屋で遊ぶ」「お外で遊ぶ」ということが選択できるようにしました。
午睡は、5歳児クラスは既に廃止しましたが、3、4歳児も同様に午睡の有無を自分で選択できるようにしました。また、2歳児クラスも12月からの進級に向けて、クラスでの午睡から午睡室での午睡に変更しました。
寝る時間、起きる時間も様々なので、いつでも移動できる環境にしてあります。
環境を変えて一年を過ごしてみて、良かった点として、
…などが挙げられます。
改善点として、
などが挙げられ、良かった点、改善点はいろいろありましたが、実際取り組んでみて、なにより保育者に心のゆとりができました。
まだまだ始めたばかりですが、1年でたくさんの良い点が見られました。
「できない」で終わらせずに行動に移すことの大切さを知った1年でした。
前年度に続き「寄り添う保育 Next Stage」ということで “ランチルームのバージョンアップ”、“自由遊びの充実”、“行事の見直し”に重点を置いて取り組みました。
2024年度は新たに2、3歳児クラスでランチルームをオープンし、2歳児は自分で配膳、3歳児は汁物を自分でよそうことに挑戦しました。
4、5歳児クラスは、ごはん・丼もの・汁物を自分でよそうことに挑戦しました。
自分で食べられる量を自分で考えてよそう必要があるので、初めは量が分からず、よそいすぎて食べられなかった…という失敗もありました。しかし経験と共に量が分かるようになり、それに伴い残量も少なくなりました。
自由遊びの環境に関しては、いつでも好きな時に制作あそびを楽しめるよう「制作棚」を用意しました。
テープ類、画用紙、はさみ、廃材等を常設し、保育者に「○○作りたいからテープ下さい」等、伝えなくても楽しめるようになりました。
とはいえ、材料が無限にあるわけではないため、使いたい時に物がなくなっていることもあり、みんなが楽しめるためにはどうしたらよいかな…、後から遊びたくなった子が何も材料がなかったらどうかな…と問いかけると、後のお友だちのことも考えて使いすぎないようにする!等と考えることもできるようになりました。
制作遊びが好きな子が多く、保育者が驚くほどの作品を作る子、アイデアも豊富で夢中になって作る姿が印象的でした。
主体性保育を意識して取り組んでいく中で、行事に関しては少しずつ取り組み方を変えてはいたものの、やはり従来にならって行うクラスもあったため、「誰のための行事なのか」を見直すことにしました。
今までは保育者が子ども達に提案して決めるスタイルがメインでしたが、2024年度はまず「子ども達がやりたいことを形にして保護者にみてもらう」ということを念頭に置き、何度も話し合いを重ねてきました。
その結果、わくわくプレイデー(運動会)では「お家の人と一緒に何かやりたい」という想いから競技に「かくれんぼ」を入れたり、「昨年度、見せたバルーンをもっと技を増やしてまたやりたい」とバージョンアップしたバルーンを見てもらいました。
生活発表会では衣装を全て手作りしたり、「舞台は恥ずかしいからイヤ!」というクラスはサークル状になって楽しんだりと、形にとらわれずに行いました。
その中で、5歳児はクラスで劇をすることにして各自で作りましたが、保育者から見て何の役か分からず、衣装をつけた練習を動画撮影し、子ども達に見せてみたところ、「役がわからなかった」「お面があるといいかも」と発信がありました。
子ども達も自分たちで決めて作り上げた行事・・という想いがあり、生き生きと、伸び伸びと取り組む姿が見られました。
主体性保育が浸透し、保護者からはたくさんのうれしい感想をいただきました。しかし中には「今までの方が良かった」など、よい意見ばかりではなく、保育理念・主体性保育についての発信がまだまだ必要だと感じました。
寄り添う保育を掲げ2年目。主体性保育についてたくさん話し合いを重ねてきました。話し合いをしていく中で、職員の方から「子ども達はどう思っているんだろう」「まずは子ども達の意見を聞いてみよう」と、大人主体から子ども主体の考え方に変わってきました。
今後の取り組みとして子ども達にとってもっと良い環境で生活ができるように共有スペースのリニューアルと、行事のあり方…誰のための行事なのかを1番に考え、保護者でも保育者でもなく子ども達のための行事を行うことを職員一丸となって取り組んでいきたいと思います。